『陽だまりの彼女』越谷オサム
読み終えた。
序盤から中盤にかけての恋愛小説感が
途中から不安と悲哀に満ちて
ミステリーになって
最後また別の小説になった
着地点は全く予想してなくて
え、こういう感じ?
という気持ちにはなったけれど
でも主人公と"陽だまりの彼女"の
最後のシーンの会話がすごくすきだったから
悪くはないね
〜ネタバレ含む〜
私はリアルな恋愛小説好きだから
え?
っと思う気持ちもあったけれど。
ファンタジーにされちゃうと。
その点では、
「僕は明日、昨日の君とデートする」
とも似ている。
「君の膵臓をたべたい」
も、物語の終盤で大どんでん返しがあり、同じ構造。膵臓の方がショッキングだったけれど。
これは、物語読んでる最中には気づかなくて、既に読んだことのある友人に説明してもらって、衝撃を受けた。これはこれでほんとよく出来てる。ほとんどミステリーだった。伏線だらけだったし。
この本は、途中、え、病気なの?
って悲しい結末を想像し、涙を禁じ得なかった。
でも痕跡まで消して消えてしまって
え、ファンタジーなの?
って少し残念に思い
でも最後
そういうことか…と妙に納得し
それならそうと先に言ってよ〜
という気持ちになる。
まぁ私的にはハッピーエンドだったから
ファンタジー?動物?と、先に言っておいてもらった方がそう読めたから落胆しなかっただろうけれど
知った上で思い返すなら、まぁ、嫌な本ではなかったかな。
浩介の最後の
小さくなってしまった真緒にかける言葉がとても好きだし。
p.129 伏線だったのか…
2018.08.24
『アリアドネの弾丸』海堂尊
こういう言い方が正しいのかはわからないが、この一冊は海堂尊の作品を愛している人にしかわからないものがある。
登場人物についてもそうであるが、白鳥さんの啖呵の切り方、高階病院長の偉大さ、シオンさんの素晴らしさ。
この物語はメディカルなのか、ミステリーなのか、サスペンスなのか、ノンフィクションなのか、その境目が取り払われてしまっている。
どこを切り取っても
どのページも、物語の鍵を握っていたり、重要な会話があったりと
隅から隅まで楽しめる。
海堂作品の肝である他の作品との関わりも、海堂作品読者にはたまらない。
2017.12.18
『螺鈿迷宮』海堂尊
元々海堂作品は読んでいた。
バチスタシリーズが追いつき、『ジーン・ワルツ』、『マドンナ・ヴェルデ』を読み終えた私は海堂作品を離れた。
たまたまBOOKOFFで『モルフェウスの領域』を手にし、読んで再び海堂ワールドに引き込まれた。
その次にBOOKOFFへ行った時には3冊購入した全てが海堂作品だった。
そのうちの一冊、『螺鈿迷宮』。
これは、テレビドラマで丸々観ていた。観ていたけれど、いや、観ていたからこそちゃんと原作を知りたいと思い読み始めた。
結論から言うと、話が全然違う。
螺鈿迷宮の主人公が田口先生でも白鳥さんでもないから、話の筋を変える必要があったのだと思う。
そうだとするならドラマの脚本家はなかなか素敵に作品をリメイクしたなぁと思う。
原作の方がやはり劇的で、重たい印象は受けるが、ドラマの螺鈿迷宮も個人的には楽しく観られた。
巧妙な罠(伏線というのが正しいのだと思うが、私からしてみれば罠のように感じられる)が至る所に仕掛けられている。
現代医療の落とし穴を確実に示しつつ、お役人の目から見た医療、患者から見た医療、もちろん、現場の医師から見た医療など、様々な側面から、今回は「死」についてがトピックとして扱われている。
誰も避けられないものでありながら、誰もが避けたがる。
死を利用するものされるもの、利用して欲しい者。読者自身とも切り離せない問題であるからこそ、「こんなこと現実に起こりっこない」と思ってもどこか、息を詰めて読み進めてしまう。
役人白鳥と桜宮病院の院長との熾烈な論理争いは、私ごときでは置いていかれてしまうばかりではあるが、ある種清々しく、こうも頭の切れ、相手の裏を探り合っている人同士の会話とは、実に楽しく聞けるものである。
さて、次に読む海堂作品は……
2017.12.08
『夜のピクニック』恩田陸
恩田陸作品は以前から度々読んでいて
常野物語シリーズは全て読んでいるし、六番目の小夜子も素晴らしい作品だったと記憶している。
通常長編小説というのは、主人公が仕事に追われる中で運命の人に出逢い、恋に落ち、問題に直面し乗り越え、晴れて結ばれるか永遠の別れが待っている。というように、月日と共に話の流れがある。
しかしこの小説は、たった、たった一夜の話。
途中に挟まれる回想エピソード以外の、現在進行形で語られる話は全て、たった一夜のことなのだ。
短編で行き摩りの恋愛を描くならわかる。一晩のできごとを15分で読める長さで書くならわかる。
でもこの
(文庫であるのに)持ち歩くのが億劫になる程分厚い小説が、たったの一昼夜の出来事なのかと思うと、興味をそそられないだろうか?
そしてこの読後感
重量の分だけ、いやそれ以上の満ち足りた読後感。恩田陸の才能に圧倒されるばかりである。
映画化もされているようだ。
映画を観た人も、まだ観ていない人も、ぜひこの小説を読んでほしい。
ぜひ恩田ワールドに浸ってほしい。
若い登場人物たちの青春、そして様々な思惑が、読む人の眼差しを掴んで離さないだろう。
2017.12.01
『イニシエーション・ラブ』乾くるみ
この本には、本当に驚かされた。
必ず二度読みたくなる
というのがこの本のキャッチフレーズであるが
本当に二度読みたくなった。
読んでいくことはそんなに難くない。
いたって普通の恋愛小説。
私からしてみれば少々捻りの少ない
言い換えればドロドロしていない、ごく普通の恋愛、という感じ。
けれど
最後の一文がどうしても意味が理解できず。
既読の友人にどういうこと?と尋ねた。
その答えからこの本の本当の意味を知った時、
例えようのないある種の感動が身体を貫いた。
この作者の真髄はここにあったのか、と。
それはもう本当に、読んだ人間にしかわからない衝撃だった。
ミステリーを超えたミステリーとも
サスペンスを超えたサスペンスとも
ラブストーリーを超えたラブストーリーとも言える。
そして、そのどれとも言えない。
私の中でずっと印象の残る作品であった。
これは読書好きな方にはぜひお勧めしたい。
騙されたと思って読んでほしい。
本当に、騙されることに、快感すら憶える、かもしれない。
2017.12.01
『ありふれた愛じゃない』村山由佳
そういえば読書ブログを作ろう、と思い立ち、昔日記と併せて書いていたなと思い出す。
でも読書のみのブログを作りたい。どのサイトにしよう。
以前はてなブログを使っていたな。とりあえずアカウント開いてみよう。
…と開くとびっくり。読書ブログが開いた。
すっかり忘れていた自分に驚くばかり。
無類の読書好きであるからもちろん、更新していない間にも幾冊もの本との出逢いがあったわけである。
その全てを書き留められなかった自分の怠慢と愚鈍さにほとほと呆れる。
ということで、記憶のある、幾つかの小説たちをまた記していこうと思う。
ありふれた愛じゃない。
もうきっと1年ほど前に読んでいて、細かい内容は定かではない。
しかし
タヒチで出逢ったその人への決して鎮まることのない想いが
当時"友人"であったその人と重なり、心苦しく読んでいたのを思い出す。
時に人間には
抗いようのない運命というのがある
どうしても、どうしても離れられない心。
なんで人間とはこんなに脆く容易いのだろう。そのくせ、複雑に絡み合った指先にまとわりつく感情、嫉妬、憎悪、、、
そしてタヒチ 南の国の香りと熱と 音が、私たち読者を異国へといざなう。
あぁ、また読みたくなったな。
2017.12.01
P.S. いつの間にか12月。試験…
『無伴奏』小池真理子
音楽をやるものとして、興味を惹かれる題名。
島清恋愛文学賞を受賞した本を片っ端から読んでみたいと思っているのだけど、なかなか欲しい時に欲しい本は見つからない。
小池真理子さんや林真理子さんの作品をあまり手にしたことが無かったので、初めて小池真理子さんの文庫本を買ってみた。
結論から言って
あまりの衝撃的展開に
読後も暫く混乱状態だった。
私は主人公よりも、主人公が思いを寄せる渉に感情移入していたので、尚更衝撃を受けたのではないだろうか。
友情、恋愛、同性、異性、時代、反抗、受験、自由
果たして作者は、読者に何を伝えたかったのだろう。まるでわからない。この全てのような気もするし、全て違う気もする。
友情と恋愛の狭間を描いた、かの有名な作品の登場人物「K」よりも
もっと劇的な感情に突き動かされて結末を迎えたように思う。
私はこの小説をどう消化したものかと思った。
どうして人は1度に2人好きになれないのだろう。
どうして裏切られたら悲しいのだろう。
何か大きな課題を与えられたような気がする。
2016.07.26