『螺鈿迷宮』海堂尊
元々海堂作品は読んでいた。
バチスタシリーズが追いつき、『ジーン・ワルツ』、『マドンナ・ヴェルデ』を読み終えた私は海堂作品を離れた。
たまたまBOOKOFFで『モルフェウスの領域』を手にし、読んで再び海堂ワールドに引き込まれた。
その次にBOOKOFFへ行った時には3冊購入した全てが海堂作品だった。
そのうちの一冊、『螺鈿迷宮』。
これは、テレビドラマで丸々観ていた。観ていたけれど、いや、観ていたからこそちゃんと原作を知りたいと思い読み始めた。
結論から言うと、話が全然違う。
螺鈿迷宮の主人公が田口先生でも白鳥さんでもないから、話の筋を変える必要があったのだと思う。
そうだとするならドラマの脚本家はなかなか素敵に作品をリメイクしたなぁと思う。
原作の方がやはり劇的で、重たい印象は受けるが、ドラマの螺鈿迷宮も個人的には楽しく観られた。
巧妙な罠(伏線というのが正しいのだと思うが、私からしてみれば罠のように感じられる)が至る所に仕掛けられている。
現代医療の落とし穴を確実に示しつつ、お役人の目から見た医療、患者から見た医療、もちろん、現場の医師から見た医療など、様々な側面から、今回は「死」についてがトピックとして扱われている。
誰も避けられないものでありながら、誰もが避けたがる。
死を利用するものされるもの、利用して欲しい者。読者自身とも切り離せない問題であるからこそ、「こんなこと現実に起こりっこない」と思ってもどこか、息を詰めて読み進めてしまう。
役人白鳥と桜宮病院の院長との熾烈な論理争いは、私ごときでは置いていかれてしまうばかりではあるが、ある種清々しく、こうも頭の切れ、相手の裏を探り合っている人同士の会話とは、実に楽しく聞けるものである。
さて、次に読む海堂作品は……
2017.12.08