『夜のピクニック』恩田陸
恩田陸作品は以前から度々読んでいて
常野物語シリーズは全て読んでいるし、六番目の小夜子も素晴らしい作品だったと記憶している。
通常長編小説というのは、主人公が仕事に追われる中で運命の人に出逢い、恋に落ち、問題に直面し乗り越え、晴れて結ばれるか永遠の別れが待っている。というように、月日と共に話の流れがある。
しかしこの小説は、たった、たった一夜の話。
途中に挟まれる回想エピソード以外の、現在進行形で語られる話は全て、たった一夜のことなのだ。
短編で行き摩りの恋愛を描くならわかる。一晩のできごとを15分で読める長さで書くならわかる。
でもこの
(文庫であるのに)持ち歩くのが億劫になる程分厚い小説が、たったの一昼夜の出来事なのかと思うと、興味をそそられないだろうか?
そしてこの読後感
重量の分だけ、いやそれ以上の満ち足りた読後感。恩田陸の才能に圧倒されるばかりである。
映画化もされているようだ。
映画を観た人も、まだ観ていない人も、ぜひこの小説を読んでほしい。
ぜひ恩田ワールドに浸ってほしい。
若い登場人物たちの青春、そして様々な思惑が、読む人の眼差しを掴んで離さないだろう。
2017.12.01